婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。
『もー、お母さん遅いよ!はやくしないと入学式に遅刻しちゃう!』
『しょうがないでしょ!今日は**の入学式なんだから!!』
私の言葉を聞いてムッと唇を尖らせたお母さんは、
すぐにニッコリと表情を崩すと私にデジカメを差し出した。
『ほんと、子供が成長するのって早いわねぇ……。あ、これで一枚写真撮ってから入学式にいきましょ』
『えー!?入学式に遅れたらどうすんの!』
『**はせっかちねー。歩いて10分の公立高校よ?しかもまだ時間まで30分あるし』
『あれ、そうだっけ!?』
お母さんに促されて新品の腕時計を見れば、確かにその通りだった。
そこで、私は想像以上に自分が興奮していた事に気付き、ひとつ深呼吸する。
すると、家の奥からドタドタという2つの大きな足音が聞こえてきた。
そして奥の扉からひょっこりと姿を現したのは、ジャージ姿のお父さんと弟。
『おー!**、制服似合ってるよ!さすがは父さんの娘だな!!』
『これで、ねーちゃんがもうちょっと痩せてりゃもっと良かったかもな?』
『ちょ、ちょっと!』
怒った私は、ジロリと二つ下の弟を睨みつける。
が、生意気な弟は睨みつける私を余裕そうにニヤニヤと見つめ返すだけだ。