婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。




私が心の中で絶叫していると、菅原様が

「ちょっといいか」と言いながらこちらへ身を乗り出してきた。


そのまま私の額にかかっていた前髪をサラリと払いのけると、ゆっくりと顔をこちらに寄せて――って、アレ?



「…………ッ!」


「……確かに、熱は無いようだな」



こつん。


次の瞬間、そんな音と共に菅原様のおでこが私のおでこに当てられる。


真っ赤になって硬直した私の視界いっぱいに広がるのは、綺麗に整った菅原様の顔で――。



(ぴ、ぴ、……ぴぎゃぁぁぁぁあああああっ!?)



今どんな状況なのか理解した瞬間、私はギシリと固まってしまった。


……っていうか、え!?なんなんだコレは一体!


もしかしなくても、私ってばいま伝説の

『おでことおでこがドッキング☆』しちゃってんの!?


え、なんで!?熱はないって言ったのに!!


っていうか菅原様、早く顔を離してください!息がマスクにかかってますってば!!


別に数秒経ったら体温変わるとかないから


「おい七宝院、ちょっと熱上がってきてるぞ」


って変わっちゃったァァアアア!?どうなっているんだ私の体内機構よ!


白血球部隊、至急応答願いますオーバー!!(錯乱中)




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