婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。
「お手洗いついでにちょっとだけ応援に行ってきたんだけどね、嬉しいことがあったんだー!」
「嬉しいこと、ですか?」
「うん!……私のクラス、星華ちゃんの婚約者さんがいるでしょ?」
「は、はい。敬太様がどうかしたのですか?」
なんだ、あいつまたなんか変なことしてんのか!?
と一瞬警戒した私をよそに、真凛ちゃんはニコニコと笑顔で口を開く。
「なんかねー、
『見学している方のぶんまで頑張りますから、ぜひ応援してくださいね』
って言われたの!!」
……その言葉を聞いた瞬間、私は頭の中が真っ白になった。
「……え?」
ぽつり、と震える唇から言葉がこぼれ落ちる。
目の前で
「だから、私は応援をがんばるんだ!星華ちゃんのクラスにだって負けないんだから!!」
と無邪気に笑う真凛ちゃんを見て感じたのは――
(ついに……ついにイベントが成功したぁぁあああ!)
――全身を包む、言い表せないほどの歓喜だった。