婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。
きっと真凛ちゃん、
敬太様のことを恋愛対象として意識しはじめたんだね!
(どのツボで気になり始めたかは分からないけど)
だから、敬太様のことが知りたくて私に聞いてみたと!!
好きな相手ができたら、その人がどんな人なのか情報収集するのは乙女として当然だもんね!
もちろんいつでも聞いておいで、私は貴女を歓迎します!!
「ふふ……では、聞いてくださる?」
「はい、もちろん!」
「それじゃあ、たとえば……」
私はニヤニヤする頬を必死に抑えながら、『天シン』も思い出しつつ
真凛ちゃんに敬太様のいいところを話した。
もちろん8割くらいは脚色してるけど、まぁそこは気にしない方向で!
(ふはははは、感謝しなさいよ敬太様!真凛ちゃんにはちゃんと好印象を与えておくからね!!)
内心ハイになりながら、私はスラスラと敬太様のいいところを並べていく。
そんな私の言葉に笑顔で相槌を打つ真凛ちゃん。
(……アレ?これって、傍から見たら『婚約者についてのろける七宝院星華の図』に見えないよね?)
話し始めてからしばらく。
ふとそんな考えがよぎった瞬間、体育館の中心から一際大きなざわめき声が聞こえてきた。
驚いてそちらを向けば、……なんと私のクラスの男子が倒れているではないか!
彼はすぐに起き上がると、再び全力で走りだす。
けれど、私は気づいてしまった――彼の走り方がおかしい事に。