青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


「っそんなこと、ない!」

「あるよ。泣きたいの、堪えてる目だよ」

「別に、堪えてない!必要がないから、泣いてないだけだもん!」


ーーバタン!

家の中へ入って、勢い良く玄関の扉を閉める。

見えた空間は、薄暗かった。


…誰もいない、空間。

寂しい寂しい、空間。


「……泣く必要、ないもん…っ」

唇を噛んで、浅い息を整える。

溢れそうになる涙を、目を閉じて堪えた。


…笑わなきゃ、いけないの。

慎ちゃんの前で、私、笑っていなきゃいけないの。

じゃないと、崩れてしまう。

すぐに、弱くなってしまう。

離れるって、決めたんだ。

前に進むって、決めたんだ。

だから、だから。


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