青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。



そんなことを考えていると、不意に目があった。

「!」

「…なに?」

池谷くんはちょっとだけ笑いながら、首を傾げる。

あたしは慌てて首を横に振ると、「なにもないっ」と言って前を向いた。


…ああもう、恥ずかしい。

池谷くんが転校してきてから、調子が狂うことばっかりだ。

なんで、だろう。

特別な誰かと出会いたいと、思っていたから?

だから、ちょうど転校してきた彼のことが、気になってしまうのか。

そうだとしたら、なんて単純なんだろう。

そう思いながらも、期待してる自分が浅はかで、嫌になる。

あたしが欲しい『大切な人』は、誰でもいいわけじゃないはずだ。

こんな、よくわからない気持ちで池谷くんと接するのは、ものすごく失礼な気がする。

たとえ彼があたしの『大切な人』になるかもしれない、としても。


…きっとあたしは、彼の『大切な人』には、なれない。


だってあたしには、なんにもない。

平凡な、人間だ。

彼の瞳がいつも何を映していて、何を考えているのか。

あたしは、知ることができない。


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