青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
…そう、思うけど。
それでも彼らが離婚しないのは、『大人の事情』とか『世間体』とか、子供の俺にはよくわからないことが関係しているんだ。
『…………』
目を閉じれば、自然と嗚咽を漏らして泣く母親の姿が浮かぶ。
嫌になって、目をそらしたくなって、散歩に出ようと思った。
母親に何も言わず、玄関を開けて外へ出る。
俺はこの近くにある海に向かって、歩き始めた。
家の前の道を、向かって右の方向に歩いて行けば、青い海が見えてくる。
その途中で、クラスの女子達がキャハハと笑いながら、俺の横を通り過ぎて行った。
『……あっ』
俺を見て、気まずそうに目を逸らす。
その中には後藤リエもいて、驚いた。
彼女たちは、俺を見て迷うように視線を泳がせたけど、すぐに俺と反対方向へ走っていく。
俺はしばらくその後ろ姿を見ていたけど、ふと嫌な予感を覚えて、海へ駆けだした。
息を切らして、堤防から砂浜を見下ろす。
そこには、スカートをたくし上げて何かを必死に探している、利乃の姿があった。