青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


「泣くことは悪いことじゃないし、いくらでも泣けばいいじゃん。ただその後、ちゃんと前さえ向ければ」


…前、さえ。

向ければ…

「『強い人』って、たぶん全然泣かないわけじゃない。泣いて泣いて、それでも前向いて、ちゃんと自分の力で立ち上がれる人のことをいうんだと思う」

ふたりきりの教室で、窓の向こうには青空が広がっていて。

トモくんはまっすぐに、前を見ている。

私はだんだんと視界が歪んでいくのを感じながら、思った。



「だから利乃ちゃんは、俺から見たら充分『強い』よ」



そう言って、歯を見せて明るく笑う。

……麗奈ちゃん、みたいだ。

まっすぐで素直で、しっかりとその足で立っていて。

……眩しい。

私がずっと見ていた、彼の姿。

私が憧れた、誰かを元気にする笑顔。

いいな、いいな。

私、この人みたいになれたらいいのに。

この人みたいに、強くなれたらいいのに。


「…だから、泣きたいの我慢しなくて、いいよ」


……ダメだよ。

そんなこと言われたら、私、泣いちゃうよ。

じわじわと、目の奥が熱くなってくる。

ああ、喉が痛い。


「………んもぉー、トモくんのバカぁぁ……」


再び溢れてきた涙を、必死に拭う。

トモくんは笑いながら、「泣け泣け〜」なんて言った。



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