青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


苦しいから、泣くんじゃない。

母親が、今『幸せ』だと言った。

それが嬉しくて嬉しくて、泣くなんて。

初めてだったから、驚いて。

俺にしがみついて泣いていたけど、もうその手は俺を必要とはしていなかった。


そのことが、弱い俺は受け止められない。


あの寂しくて愛しい夏が、色褪せて消えていく気がする。

利乃が俺じゃない誰かの手を握り、先へ先へと歩いていく。

あの夏の、海の水に浸かったままの俺を残して。


そんなことをぐるぐると考えては、麗奈と過ごすうちに、惹かれていく。

立ち止まったままの俺なんかとは違う、その強さが眩しかった。

だから、突き放した。

俺じゃ、麗奈にはつりあわない。

麗奈を泣かせるだけ、だ。



『目ぇそらさないで、ちゃんと見てよぉ……!』


瞳に涙を溜めて、訴えてくる麗奈。

……わかってる、はずなのに。

その優しさが心地よくて、触れたくなって、キスをして。

自分のことなのに、呆れる。

どれだけ麗奈を振り回したらいいんだろう。

どれだけ傷つければいいんだろう。


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