青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
笑ってごまかしたりせずに、素直に感情を表情に出していて。
わかりやすくて、まっすぐ。
驚かされることも多いけど、いつだって彼女は自分の想いを、正面からぶつけてくれたから。
…つい、俺まで素直になって。
麗奈に、利乃への想いをこぼしていく。
その度に真剣に考えてくれるのが、嬉しかったのかもしれない。
優しいから。
誰よりも、優しいから。
…だから。
「…泣きそうに、なる」
誰に聞かれるでもなく、つぶやきは空気に溶けて消えた。
泣いてもいいのかなって、思ってしまう。
甘えてみても、いいんじゃないかと思えてしまう。
…麗奈なら、俺のどうしようもない弱さだって、受け止めてくれそうな気がして。
でも、そうしたら。
俺が麗奈のところへ行ったとして、利乃はどこへ行くんだろう。
このあいだ、深夜に俺の家へ来て、泣いていた利乃。
最近、母親の恋人との距離感に悩んでいたけど。
それでもずっと憧れていた母親の幸せを、優先すると言っていた。
きっと、幼い頃の利乃なら、何も言えなかっただろう。
ただただ状況に流されて、不安定になって、俺のそばで泣く。
そんな、利乃が。
…あんな風に、泣いていた。