イジワルなキミの隣で
こっち側って初めてだけど、想像通りなーんにも見当たらない。
それどころか人すら歩いてなくて、本当にこんなところにラーメン屋があるのかと疑ってしまう。
だけどしばらく歩いて行くと、遠くの方にぼんやりと赤提灯の光りが見え始めた。
暗闇の中に真っ赤な赤提灯はよく映える。
古びた引き戸をガラッと開けると、中からスープのいい匂いが漂って来た。
「おっちゃーん、ラーメン2つねー」
中は満席に近い状態でカウンターしか空いてなかった。
佐伯先輩がカウンターの向こうにいるお店のおじさんに気前良く声をかける。
そしてカウンターに座ったのを見て、私もゆっくり隣に座った。
「もしかして航ちゃんの彼女か?いやー、若いっていいなー」
がはははとおじさんは豪快に笑う。
目がくしゃっと細くなって、なんだか人懐こい笑顔。