腕枕で朝寝坊

*ひとりにしないで



お礼SS
~ひとりにしないで~



新婚編
美織視点



7月某日。
紗和己さんと海へきた。

実はふたりで海へ遊びに来たのは初めてで、水着姿を見せあったのも初めて。
(スポーツクラブのプールは除く)


もう二人でお風呂にだって入っちゃう仲なのに、うーん、やっぱり水着姿を見られるってなんか恥ずかしい。

もっとも。私は間違ってもビキニなんか着ないし大人しめのワンピの水着なんだけど。


けど、私の羞恥心がちっぽけに思えるぐらい紗和己さんの方が盛大に照れている。


「可愛すぎて直視出来ないんですけど…」


自分の妻の水着姿に顔を赤らめながら視線を逸らすこのひとが、もうすぐ34歳になる私の旦那さまです。

紗和己さん、純情にもほどがあるよ。


「太陽の下で見る美織さんの肌って、なんだか新鮮だから…ちょっといけない気持ちになっちゃいますね」


訂正。すごく不純だった。夜が怖い。


けど、不純なだけならまだいい。


「美織さん、ナンパされちゃいますから僕から離れないで下さいね」


出ました紗和己さんの過保護発動。

心配しすぎだと思うけどなあ。


そんなわけで私の側を片時も離れなかった紗和己さんだったけど


「じゃあちょっと飲み物買ってきますんで、ここで待ってて下さい。
携帯持って行きますんで変な男に声かけられたらすぐに呼んで下さいね。飛んで戻って来ますから。
あ、ちゃんとパーカー着てて下さいよ」


売店にジュースを買いに行くため、紗和己さんは過剰な心配をしてから私をパラソルの下に残して行った。


紗和己さん、本当に過保護っていうか私のこと過大評価し過ぎだなぁ。

セクシーな水着でグラマーな身体を惜し気もなく見せてる美女がひしめくこのビーチで、わざわざ私に声かける人なんていないと思うけど。


そんな風に苦笑しながら私は紗和己さんの帰りをパラソルの下で待った。


けれど。


……遅いな?売店はそんなに遠くないと思ったけど、混んでるのかな?


なんとなく気になって、私も売店へ向かってブラブラと行ってみる事にする。


しばらく歩いて売店の近くまで来たとき、私は驚くべきものを目にした。
それは。



ジュースを手にしたまま、ビキニの女の子3人組に囲まれてほとほと困っている紗和己さんの姿。



--さ、紗和己さん、ナンパされてる!!?



「いや、だから僕、妻と来てるんで困ります」

「少しだけ~。30分だけでいいから付き合って下さいよー」

「いえ、無理ですって」

「じゃあメアド教えて?教えてくれなきゃこの腕離さないからー」


「紗和己さん何やってんの!!」


私はそう声をあげてセクシーなおねーさん達の間に割って入ると、困り果てていた紗和己さんの腕をガッシと掴んで引っ張り歩き出した。


紗和己さんを連れ去った私の後ろから「ちぇー」とか「あーあイイ男だったのに~」と不満の声が聞こえてくる。は、腹立つー。


「もー!紗和己さん、私にナンパされるなとか言っておきながら、自分が逆ナンされてるんじゃん!」

「す、すみません。なんか積極的な女性が多くて次から次へと来て困ってしまって…」

「!?ちょ…何人に声かけられたの!?」

「えっと、さっきので3グループ目です」

「さ、紗和己さんのバカ!!」


よく考えてみたら、こんな開放的な場所でひとりにしたら危ないのは紗和己さんの方なのだ。


「もー、ほら!紗和己さんもパーカー着て!むやみに肌さらしちゃダメ!」

「すみません…」


こんなイイ男を半裸でひとりにしてはいけなかった。


私は改めて自分の夫が天然タラシのイイ男だった事を痛感すると共に、彼が私を過保護なほど心配する気持ちが少し分かったのであった。




~ひとりにしないで・完~

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