腕枕で朝寝坊

☆トリック・オア・トリート!



番外編SS
~トリック・オア・トリート!~
 
※家族編・花海、光月共に幼稚園生



秋は好き。美味しい果物がいっぱいあるし、涼しくなってお洒落も楽しみやすいし。それに、秋の雑貨は可愛いものが多いから。

我が家のリビングには私の作ったサンキャッチャーの横に、花海と光月が木の実や木の葉で作ったモビールが飾られている。

キラキラと秋の優しい陽射しを受けながら揺れる可愛いオブジェたち。

そんな季節感いっぱいのリビングに、最近はちょっぴり妖しくて楽しいアイテムが増えた。


「可愛い!かぼちゃのオバケだ!」

「おばけー!」


テーブルの中央に飾られたのは、ジャックオランタンの電子キャンドル。灯りをともすとパープルやオレンジのかぼちゃのオバケがチカチカと点滅した。


「もうすぐハロウィンですからね。うちのお店もかぼちゃグッズでいっぱいですよ」


お土産のキャンドルにはしゃぐ娘たちを見て満足そうに目を細めながら、紗和己さんはそう言った。


「そっかーハロウィンかー」


言われてみれば10月ももう半ば。そういえば買い物に行った街中でもかぼちゃやオバケのディスプレイをよく見たっけ。


「ママ、おうちでもハロウィンやりたい!」

「やりたい!」


私たちの会話を聞きつけた花海と光月がパタパタとこちらへ駆け寄ってくる。そして甘えるように抱きつきながら、

「花、オバケのカッコしたいなー」

「月はかぼちゃ!」

と、愛らしいおねだりをした。


「そうだね。じゃあ31日はみんなで仮装しようか」


娘たちの可愛いおねだりに思わず微笑んで答えると、ふたりは「やったー!!」とそれはそれは嬉しそうにピョンピョンと跳ねた。

そんな幸せいっぱいの光景を見て、紗和己さんも嬉しそうに微笑む。


「じゃあパパはイタズラされないようにお菓子を買って帰って来なくちゃいけませんね。何にしよう、かぼちゃのプリン、それともパンプキンパイかな」


さらに追い討ちを掛けるパパの嬉しい発言に、花海も光月も目を輝かせて大喜びした。


「パパ大好き!花はプリンがいいな!」

「月はね、えーっとえーっと……とんがりコーン!」


はしゃぐ娘たちを見ていたら、私もなんだかワクワクしてきた。

きっと今年のハロウィンは楽しくて素敵な日になる。

テーブルの上のジャックオランタンを見ながら、そんな予感に胸を弾ませた。



そして10月31日。ハロウィン当日。

部屋にはオレンジとパープルのモールやこうもりのオブジェが飾られ、妖しくて楽しいパーティールームに様変わりしている。

花海と光月には、リクエストどおりオバケとかぼちゃの衣装を作って着せてあげた。リボンの付いたフード型のオバケポンチョに、かぼちゃを模したベレー帽とふんわりかぼちゃ型ワンピース。

ママの力作に娘たちも大満足みたい。

そして私も。せっかくなので娘たちといっしょに仮装してみることにした。


「わー、ママ可愛い!」

「かっこいい!」

「へへへ、似合う?」


魔女の三角帽子にハーフ丈のマント。今日の私は悪戯な魔女だ。

仮装だなんて初めてだけど、いざしてみると想像以上に楽しい。

魔女になった妻を見て、紗和己さんどんな顔するかな?


そうして3人でワクワクしながら待っていれば、時計の針が7時を過ぎる頃お待ち兼ねのパパが帰ってきた。

「ただいまー」の声がするやいなや、娘たちは部屋を飛び出して玄関に一目散に駆けて行く。


「パパ、トリックオアトリート!見て見て!花、オバケになったの!可愛い?」

「見てパパ!かぼちゃ!」


花海と光月のキュートな仮装に、紗和己さんは満面の笑みを浮かべて頷く。


「うわぁ、ふたり共とっても可愛いなあ。すごく似合ってますよ」


そうして娘たちの頭を撫でてから、お楽しみの大きな袋を手渡す。


「Here's your treat。Have a frightfully fun Halloween」


そう言って紗和己さんが渡した中身は、かぼちゃのプリンに、色とりどりのお菓子が詰め込まれたキャンディバッグ。

これには娘達も大喜びだ。


「やったー!パパ、ありがとう!ママ、ハロウィンって楽しいね!」

「月、明日もハロウィンやる!!」


胸にお菓子を抱きながら飛び跳ねるようにリビングへ駆けてく子供たちを眺め、紗和己さんと顔を見合わせ幸せにほころばせた。


「子供がいるとイベントが盛り上がっていいですね。来年もまたやりましょう」


彼の言葉に頷いたあと私はふと思い立ち、手に持っていた星のステッキをくるくる回しながらおどけて言った。


「トリック・オア・トリート?なんちゃって。私も子供たちに便乗して仮装しちゃった」


よくよく考えると大人になってこれは恥ずかしい気がしないでもないけど。でもお祭りだしと開き直って微笑めば、紗和己さんはクスリと肩を竦めて笑う。

そして、大きな手で私の頬を撫でながら顔を近づけて囁いた。



「Here's your trick。可愛い魔女さんにはお菓子はあげません。かわりに素敵なイタズラを期待してますよ」



驚いてしばたいた瞳に映るのは、とっても悪戯な笑みを浮かべた紗和己さんの顔。

その表情から彼がどんな『イタズラ』を期待しているのか分かってしまった私は、顔を赤くさせ動揺してしまう。


「もう、紗和己さんってば……」


照れた顔を隠すように三角帽を目深にかぶれば、紗和己さんはクスクスと笑いながら私の手を引いてリビングへ向かう。


「ふふ。でもお菓子はいっしょに食べましょうか。美味しいかぼちゃのプリン、みんなで食べましょう」


そうして娘達の待つリビングに入った紗和己さんは、もうパパの顔に戻っていて。

私だけを動揺させておいて自分は穏やかな笑みを浮かべてる紗和己さんはきっと、この部屋にいるどのオバケよりも悪戯っ子だと思った。
 
 
【おわり】
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