腕枕で朝寝坊



「どうしちゃったんですか美織さん?僕、そんなにいけないコト言いました?」



心配そうに席を立ち上がり、私の肩を抱いた彼の手を振り払った。



「さわらないで!紗和己さんの馬鹿!エッチ!!」



その言葉に紗和己さんがすっとんきょうな声を上げる。



「え…エッチ??」



「私、平ったくないもん!普通だもん!なのに馬鹿にするなら、紗和己さんなんか風船みたいな女性と付き合えばいいじゃない!」



ベソベソとした顔の私を、紗和己さんがパチパチと目をしばたかせて見つめる。



「……美織さん…何の話してます?」


「何よ今さら!散々私の胸が小さいって遠回しに言って!」


「……身長の……話のつもりだったんですけど………」



「………………えっ……………」



賑わっていたオープンカフェが静寂に包まれたような錯覚をおこした。



「欧州の女性は背が大きいなあって…話だと思ってたんですが………あの……」



こんな表情の紗和己さんは初めて見た。どんな表情かは上手く言い表せられないけど。



そして一方の私の顔は羞恥一色に染まっていたと思う。


きっと今の私ならフットーした頭でやかんのお湯が沸かせたコトだろう。


いっそ、その場に倒れてしまいたい程に恥ずかしさと申し訳なさでクラクラする私の頭を、紗和己さんが突然ギュッと抱きしめた。


「…く、ククク…プッ、あはははは!」



堪えきれない様子で笑い出した紗和己さんの胸板に、熱い顔を押し付けながら私は

「ご……ごめんなさい……」

と、モゴモゴと謝った。



「美織さんは本当にもう…ふふふ、どうしようもなく可愛いですね」



彼のそんな台詞にますます頭がフットーしていく。


しかも、派手に痴話喧嘩(私が一方的にだけど)をやらかしてしまったせいで、他のお客さんがチラチラこちらを見てるコトにも今さら気が付いた。


さっきの外人さんまで「oh!ナカナオリネ!」なんて言って楽し気に注目している。


……ああ、私、このまま気を失ってしまいたい。



気を失うコトの叶わなかった私は、紗和己さんの手を引っ張ってカフェから出た。


無言のまま真っ赤な顔でズンズン手を引っ張って歩く私に、紗和己さんは


「僕は美織さんの胸に不満を持ったコトは一度もありませんが…

そんなに気にしてるんだったら、今夜からもっと気合いを入れて愛させて貰いますね」


などと、ますます私の頭をフットーさせる様なコトを告げる。



あああ。自業自得とは分かっていても、もう限界。恥ずかしくて私、死ぬ。



羞恥で頭のクラクラしてきた私の肩を抱きながら、紗和己さんはどこか獣の気配のする笑顔を嬉しそうに浮かべていた。ああああ。




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