天使ラビィの不思議な珠
サユちゃんは、ゆっくりページをめくった。
「こまるのは、イヤなお願いを言われてしまうときです」
「ふんふん」
イヤなお願いする人っているんだな。
ボクだったらどうかな。
かずくん、ボクのことたまに叩くけど、いなくなっちゃったらやだなぁ。
気がついたら、サユちゃんが話すのをやめていた。
「サユちゃん、つづき……」
読んで。
そう言おうとして、言葉が出なくなった。
サユちゃんがなんだか悲しそうに見えたから。
「あのね、サトルくん」
「うん」
「サユ、このおはなし……」
そこまでサユちゃんが言ったとき、先生の声がした。
「サユちゃーん。おばあちゃんが来たわよ」
「あ、はーい。……サトルくんごめんね。また明日ね」
「うん。サユちゃん、バイバイ」
サユちゃんはカバンをもって、玄関で待っているおばあちゃんのところへ行った。
サユちゃんにはお父さんがいない、ってお母さんにきいたことがある。
お母さんもお仕事でいつも忙しいんだって。
だからいつもお迎えにはおばあちゃんが来る。
サユちゃんを背中をじっと見ていたら、振り向いてボクに小さく手を振ってくれた。
サユちゃんが寂しそうに見えたから、すごく大きく手を振り返した。
「サユちゃん、またねー!」
大きい声でそう言ったら、サユちゃんはようやく笑った。