恋の糸がほどける前に
今まで、私のことをバカにしたり、からかったり。
女の子として見てくれたことなんてなかった貴弘だよ。
いきなりその関係が変わるなんて思わないよ……!
混乱しすぎて、言葉にならない。
それなのに、情けなくも涙だけは無意識のうちにこぼれ落ちていく。
「俺が守りたいのはお前だって、気付いたから」
静かに言った貴弘のその言葉に、不覚にもドキンと心が震えた。
それと同時に、さっき貴弘が言っていた、「関係ある」という言葉の意味を理解する。
「……奪うよ。あいつから」
「っ!?」
耳元で囁かれた声は、こんなにずっと一緒にいる私でも聞いたことがないくらい、甘くて。
……心に、ビリッと電流が流れたみたいな感覚がして、戸惑った。
「おまえの心。奪うから」
覚悟しといて。
囁くような甘い声でそう言い残して私を解放した貴弘は、放心状態の私を置いて教室を出ていった。
ガラッ、と教室のドアが閉まる音が耳に届くと同時に身体中の力が抜けて、へなへなと床に座り込んでしまう。