恋の糸がほどける前に
私って、嫌になるほど単純だ。
どうしてこんなに暗いのかと肩を落としたくなるほど。
自分の目が猫のように暗闇に強くなればいいのに、なんて考えてしまうほど。
この暗闇が鬱陶しかった。
「……おーい?」
なにも返さない私に水原が首を傾げる。
……本当、鬱陶しいよ、この暗闇。
だって。
きっとさっき、水原、笑ったよね。
やっぱ似合うな、って、そう言って。
私を見て、優しく笑ったに違いないの。
声で、空気で、それが分かったのに。
水原の自然にこぼれた笑顔が大好きなのに。
……暗いせいで見られなかったなんて、なんてもったいないことをしたんだ、私。