恋の糸がほどける前に
あ、と思っても、私にはそれをどうすることもできない。
離れてもなお、掴まれていた部分だけが熱を持っているような気がした。
いっそ、ずっと触れてくれていてくれてよかったのに……。
って私、変態みたい。
変なこと考えるの、やめやめ!
「行こっか!」
一段、タンッ、と軽やかに踏み出す。
だけど、水原は何も言わないし、歩き出さない。
「……?」
どうしたんだろう?
「水原?」
「あのさ」
不思議そうな私の声と、少しこわばったような水原の声が重なった。
「なに?」
私のはただの呼びかけだったので、水原に譲るようにして言葉の続きを促す。
すると、水原が少し俯きがちだった顔を上げた。