恋の糸がほどける前に


見送られる先輩と、見送る後輩。

校舎の外に出ても、たくさんの笑顔と涙に溢れていた。


ふいに目に飛び込んできたのは、卒業証書の入った筒と色鮮やかな花束を抱えて、たくさんの後輩に見送られながら笑顔で学校を出ていく、手をつないだ男女の先輩。



────この学校で恋をして、想いを通わせて。

そしてふたり、手をつないだまま卒業できる。

それってすごく幸せで、そして、特別なことなのだろう。


「……なにを見てんの?」


ふいに水原が声をかけてきて、目が合って。


……愛しいなぁ、って、思った。



「ううん。……なんでもない!」

「なんだよ、教えてくれたっていいじゃん」

「……私たちもあんなふうに手を繋いで卒業できたらいいなぁ、って思ってただけだよ」


言葉にするのは恥ずかしかったけど、なんだか無性に伝えたくなって、素直にそう言った。

すると水原は、一瞬きょとんという顔をしたけど、すぐに嬉しそうに笑ってくれて、私まで幸せな気持ちになる。


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