恋の糸がほどける前に
「……変な顔になってる」
「え、ちょっと、失礼っ!……じゃなくて!私たち、……その、こ、恋人同士じゃないよね」
「メニューくらいいいだろ、別に」
特に気にした風もなくそう言い放った水原を、思わず凝視してしまう。
────確かに、そうなのかもしれないけどさ。
でももし、このお店に同じクラスの人がいたとしたらどうするの?
私と水原が仲がいいのは周知のことだから、一緒にご飯を食べていたところでとくに噂にもならないだろうけど。
……でも、一緒に食べているメニューがカップル限定メニューだったら、さすがに誤解されちゃうっていうか、なんていうか……っ!!
「水原はそういうこと考えないの?」
「は?」
私の頭のなかの葛藤からぽろっと零れた言葉に、水原は首を傾げた。
「そういうことってどういうこと?」
「だからー……、さすがに誤解されちゃうでしょ。クラスの人とかに、もし見られたら」
「食ってるもんまで見てないって」
「でも」
「いいからいいから。……だってお前、あれが食べたかったんだろ?」
当たり前みたいにそう言った水原に。
……一瞬、言葉が詰まってしまった。