恋の糸がほどける前に

「あ」

やがてゆっくりとふたりの身体が離れて、視線を上げた萩野先輩が、私の視線を捉えた。

一瞬驚いたような顔をしたけど、すぐにいつものからかうような意地悪な表情になる。

「っ!」

私を見てニヤッと笑い、その笑みの妖艶さに不覚にもドキリとした。


「葉純」

「えっ!?……きゃ、きゃああ、葉純ちゃんっ!?」

萩野先輩の視線を追った、キスの相手────、正真正銘、萩野先輩の彼女である、可愛らしい女の人が私に気付いて悲鳴を上げた。


ぱちぱちと、驚いたように何度もまばたいた大きな瞳。

白い頬を羞恥にサッと走った朱の色。

ふわりと背中で揺れるのは、緩くパーマのかかった天然栗色のキレイな髪。


……文句のつけようがないくらいのこの美少女は、萩野先輩の彼女であり、私の部活の先輩でもある。

────藤堂雫(とうどう しずく)さん。

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