恋の糸がほどける前に

萩野先輩の家は、歩いて10分くらいのところにあるマンション。

夕飯なんてとっくに食べ終わってると思うんだけどなぁ……。

心の中ではそう思いながらも、エントランスホールを抜けてエレベーターで萩野家の部屋がある階まで上がる。

チーン、と軽やかな音と共にエレベーターが止まってドアが開き、外に出て視線を萩野先輩の部屋の方に向けた瞬間、だった。


「っ!!」

思わず、息をのんで身体が硬直してしまった。

……私の視界に、飛び込んできたから。

萩野先輩と彼女さんが家のドアの前で、……キス、してるとこ。

「……っ」

な、なんで!?

ドアを開けて家の中ですれば良いじゃん!!

なんでわざわざ家の外でするの!?

こんな、家族同然のイトコのチューなんて、見たくないですから……!

────そう思うのに、初めて見る生チューに、私は悔しいかな目が離せなくて、その場に立ち竦むしかなかった。

< 41 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop