恋の糸がほどける前に
萩野先輩の家は、歩いて10分くらいのところにあるマンション。
夕飯なんてとっくに食べ終わってると思うんだけどなぁ……。
心の中ではそう思いながらも、エントランスホールを抜けてエレベーターで萩野家の部屋がある階まで上がる。
チーン、と軽やかな音と共にエレベーターが止まってドアが開き、外に出て視線を萩野先輩の部屋の方に向けた瞬間、だった。
「っ!!」
思わず、息をのんで身体が硬直してしまった。
……私の視界に、飛び込んできたから。
萩野先輩と彼女さんが家のドアの前で、……キス、してるとこ。
「……っ」
な、なんで!?
ドアを開けて家の中ですれば良いじゃん!!
なんでわざわざ家の外でするの!?
こんな、家族同然のイトコのチューなんて、見たくないですから……!
────そう思うのに、初めて見る生チューに、私は悔しいかな目が離せなくて、その場に立ち竦むしかなかった。