恋の糸がほどける前に
「……は、なんだよそれ。ムカつく」
「だ、だって!本当にあんたには関係ないじゃん……っ!」
気分を害したように眉をひそめた貴弘は、整った顔をしている分、なんだか怖い。
負けそうになる心を奮い立たせて言い返したら、フン、と鼻で笑われた。
「隠したってどうせすぐバレるんだから、今言えば?」
「ば、バレないし!!」
「お前がもし万が一そいつと付き合えたとして、同じ高校なんだから一緒にいたら目に入るし。学校では隠し通せても、家でいちゃこらしてたら純希の部屋に俺が住んでる以上、いつかは会うだろ」
バカにしたように言った、貴弘の言葉になんだか一気に力が抜けた。
そっか、やけに最近我が家に来るなぁ、と思っていたけど、こいつ、お兄ちゃんの部屋に住んでたのか。
……お兄ちゃん、本当なにしてくれちゃってんの。
「お兄ちゃんと仲良すぎるよ、本気で」
はぁ、と思わずため息を吐いた。
こんなヤツと仲良くしてるから、いつまでたってもお兄ちゃんには彼女ができないんだ、きっと。