恋の糸がほどける前に
私の首元に顔をうずめて、まるで縋りつくように私の体に回した腕に込めた力を強くした水原に、私は名前も分からない強い感情が心に湧き出てきたのを感じた。
「……っ」
水原の背中に手を回し、強く抱きしめ返す。
────これが、恋だとするなら。
誰が、幸せな想いと言ったの?
声に出してしまったら、きっとそれは言葉ではなく涙になる。
そう思ってしまうくらい、強い感情が心を埋め尽くしていた。
穏やかで優しくて曖昧で。
幸せな恋心。
それが私の恋だと、これ以上ないくらい好きの気持ちだと思っていた。