始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
「すごく勝手なことだけどさ、自分が2番目の存在でいることはもう嫌なの」

「・・・それって」

「うん、そう」

多くを語らなくてもお互いに何を言いたいかが分かる。沙耶とは全てを語ってきたから。だから私が2番目の存在を嫌がる事の意味をすぐ理解してくれたと私は感じた。
そう佐野さんにとって私は2番目の存在だったから。ううん、子供だっていたわけだから2番目にもなれなかったんだ。
それは初めから承知の上で自分から近寄って行ったのにあまりに都合のいい話だけど、彼に恋をしていたあの4年間私は彼にとって1番の存在になりたいと何度も声に出さずに心で叫んだ。
そしてその想いに負けた。

「でもあの男とその彼は違うわけだからさ。まあ私にはまだどんな人だか分からないから何とも言えないけど。少なくとも咲季の心を動かす男がいて、話してくれたわけだから私は見守るわよ」

「ありがとう」

私がそう言うと置いたままだったビールのグラスを手に持って、微笑みながら軽く私のグラスにあててビールを飲んだ。それに合わせて私も一口飲んだ。

「その後輩くんのことちゃんと見てみなよ。そうしたら自分の気持ちも見えてくるからさ。怖かったら聞いてみなよ、今もその女の子に気持ちが少しくらいあるのかを。少しでも残ってるって言われたらまた考えようよ、それでも咲季に気になる気持ちが残るかを。先に自分が1番になれないんじゃないかって悩むよりも、まず確かな事と向き合わないと」

「できるかな?」

「あんたそんな女じゃないでしょ」

ハッキリそう言い切った沙耶の顔を見て笑ってしまった。

言葉はぶっきらぼうでもちゃんと答えてくれる。そんな彼女は私の隙間の開いた心を埋めてくれる。
そしてそのまま沙耶の荒くも心のあるアドバイスをつまみに、何杯ものグラスを2人で空けた。

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