始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
「だからその気持ちが私にはリアル過ぎてさ。それに簡単に彼の想いは忘れられないって思うんだ」

「その女の子がこの先彼に振り向くことはないの?」

「う~ん・・・ないと思うけど分からない」

「いい男?」

相槌を打ちながら聞いていた沙耶の表情が、興味本位に変わったのが見えた。

「うん、かなりね。女子社員がいつもキャアキャア言ってるし、我こそはと彼にアピールしてるわよ」

「あら、いいじゃない。そんな男がフリーでいるなんて、羨ましいくらいよ。悩んでいないで咲季も自分の気持ちに素直になればいいじゃない。彼の周りでキャアキャア言っている子達よりいい位置にいるんじゃないの?」

「う~ん・・」

「お酒が入った勢いもあっただろうけど、その彼と寝たわけでしょう。その後だって彼は逃げるわけでもなく、咲季に優しくどころか甘く接しているんでしょ?よっぽどあんたのほうが逃げているように聞こえるけど、私には」

「逃げてはいないわよ」

「じゃあ何よ」

「・・・怖いのよ、好きになるのが」

心にくすぶっていた本当の理由が勢いに乗って口をついてしまった。

今日は沙耶に会って今の自分について話そうと思っていたのに、口から言葉にして話そうとするとうまく表現できなかったこと。沙耶に聞かれてもずっと曖昧に答えていたこと。
私の本当に言いたかったこと。そう、好きになることが怖かった。

そんな私の言葉を聞いて、沙耶は何も言い返さずに私を見つめた。
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