始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
「こんな遅くまで仕事してきて疲れているんじゃないの?」

彼の顔色を見ながらそう尋ねる。そんな私に「いただきます」と紅茶を一口飲んでカップを見つめた。

「それでも頭に浮かぶのは今井さんの顔だったから」

ふいに聞いた言葉に愛しさがこみあげる。

「何でそういう言葉をさらっと言えるかなぁ」

照れを隠して彼を睨むと、澤田くんはカップから私へと視線を移した。そしてそのまま見つめ合う状態になると、私にはもうお手上げになる。
そんな私を理解しているかのように、澤田くんは口元に笑みを浮かべた。

「僕は仕事が好きで大半の時間を使ってしまうけど、仕事から頭を切り替えると頭に浮かぶのはあなたなんです。笑っている顔や困っている顔や怒っている顔。その時々に違うけど、いつも思い出してその度にあなたに会いたくなる。でも今日は我慢できなくて来てしまいました」

何てことを言うのだろう・・。その言葉に私がどれだけ揺さぶられるか分かっているのかな。
彼の眼差し・甘いささやきに魅せられてしまう。それと同時に切なさまで感じてしまう。

「私・・澤田くんにそういうこと言われると、嫌な返し方しかできなくなる。それが自分でも嫌になるよ。ありがとうって笑えればいいのに、逆にどうして?って思っちゃうし。自分でも可愛くないって思っているよ。他の子達なら心から喜ぶのに、私にはできないってね」

なんとか自分の気持ちを素直に伝えたけど、やっぱり恥ずかしくて澤田くんの顔は見られない。ラグマットに座る私よりソファーに座る彼が高い位置にいてよかったと思うのもつかの間、彼は立ち上がり私の横に座ってきた。
私が視線をいくらそらしても、私の顔を覗きこんでくる。
観念してゆっくり視線を彼に向けると、何とも優しい眼差しで私を見てる。

「そんな目で見ないで」

困っている私に澤田くんは、クスリと笑った。

「可愛い」

突然の誉め言葉にドギマギしてしまう。
可愛い?私が可愛いはずがない。
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