始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
「でも今井さんにはどうしても柚原のことが気になりますね?」

「・・うん、気になるよ」

「確かに僕は柚原のことが好きでした。でも自分の気持ちに気付いた時には柚原はもう健吾を見ていた。一生懸命気持ちを隠す彼女を見ているうちに、僕は柚原のことを支えてあげたいって思うようになっていました」

「支えたい?」

「そう、無理している柚原が悩んだり傷ついているのを見たら、少しでも気持ちが楽になるようにしてあげたかった。もどかしい気持ちになる時もありましたよ。でも頑張る彼女が好きでした。健吾が気付かないから柚原は辛い思いを何度もしたけど、健吾と一緒にいる柚原はやっぱり幸せそうだったから、諦めずに頑張って幸せになって欲しかった。そしていつの間にか自分の目は今井さんを追いかけるようになっていたんです。」

「私?」

突然の話の展開に面食らってしまった。何で私が出てくるの?私は何もしていないよね。確かに澤田くんの楓への気持ちに気付いても、最後まで確かめたりしなかったし。どうして私なのか理解できない。その意味を探るべく澤田くんの顔を凝視すると、ゆっくりと答えてくれた。

「最初は今井さんが柚原に親身に接していることで、健吾への気持ちを知っているんだと気付きました。隠している気持ちを相談できる存在の今井さんが少しずつ僕も気になって。健吾の気持ちを揺さぶる言葉をかけたりするあなたはとても優しくてたのもしかった。きっとあの2人にとっていいきっかけになっていました。そして柚原が涙流した時の話をしたこと覚えてますか?」

楓が泣いた時のこと・・?あ・・美好に山中くんと伊東さんが行ったって話ね。美好は楓にとって山中くんとの大切なお店だから、そこへライバルである伊東さんを連れて行ったことは本当にショックだったはず。それを慰めたのが澤田くんだったんだ。

「うん、覚えているよ。澤田くんが教えてくれたよね」

「そう、その時に柚原を心配する今井さんが僕には印象的でした。後輩とはいえ人の幸せを願えるあなたが気になって仕方なかった」

そんな風に思っていたなんて・・。でもそれだけ楓に共感したのは理由があったからだよ。
< 46 / 103 >

この作品をシェア

pagetop