始まりは恋の後始末 ~君が好きだから嘘をつく side story~
嫉妬と虚勢
朝出勤をして目の前に映るいつもの光景に胸がモヤッとする。

「澤田さん、おはようございま~す」

甘い声で彼にピタリと寄り添う女子社員。
彼が挨拶を返せば頬を染めて上目遣いで笑顔を見せる。
嬉しそうに、計算されたような表情を彼に向けている。
こんなのもう何年も見てきたことなのに、鼻で笑っていたはずなのに、今の私は・・胸がモヤモヤしてしまう。
ううん、モヤモヤだけでは収まらない。イラっとしてしまう。
顔がこわばってしまうのを感じる。
そうこれは・・・嫉妬。

「澤田さ~ん」

また違う女子社員が寄っていく。
見たくないのに、目に入ってしまう光景。
私はそれを避けるように、自分のデスクへと急いだ。

「おはよう」

もうメールチェックを始めている同僚に挨拶をして席に座る。
そして自分も同じようにメールチェックをしながら・・・しているつもりなのに内容が入ってこない。
視線はパソコンに向けているつもりなのに、実際は逸れていく。
彼の姿を探すように。
私はまた想い人を視線の端で探すようになっていく。
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