ラストバージン
「新人の様子はどう?」


病棟に戻るとすぐにリハビリ科の看護師長から声を掛けられ、二人で仮眠室へと足を運んだ。
四十代の彼女はうちの病院一筋で、看護師歴も二十年以上というベテランだけれど、ナースステーション内にあるパソコンの前からほとんど動かない。


その仕事振りは、本当に仕事をしているのか、と周囲に疑問を抱かせている程なのだ。


「皆、頑張っていますよ。ただ、矢田さんだけが少しミスが目立っているので、スタッフには気を付けて貰うようにしているのですが……」

「あの子、やる気ないんじゃないの? この間の研修でも一人だけやる気が見えなくて、看護副部長から注意されていたわよ」

「そうですか。私も出来る限りアドバイスをするように気をつけているのですが、本人も精一杯のようで……」

「それって、酒井さんの指導が悪いんじゃないの?」

「そんな事ありませんよ。酒井さんは精一杯アドバイスをしていますし、細かい点もよく見てくれています」

「本当にそうなの? 矢田さんの看護記録、間違いだらけらしいじゃない? さっきも、スタッフ達が『有り得ないレベルだ』って言ってたわよ」


師長はため息をつき、不満げに眉を寄せて私を見つめた。

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