ラストバージン
Count,11 正解のない答え
あっという間に二日が過ぎ、とうとう榛名さんとの約束の日が来てしまった。
いつもは彼と出掛ける事が楽しみで仕方ないのに、今日はとてもじゃないけれど笑える気がしない。


榛名さんなりの気遣いだったのか、あの日以降は一度も楓や食事に誘われず、必要以上に連絡を取る事もなかった。
今の私には有り難い事だったけれど、結論はまだ出ていない。


はっきりと〝NO〟と言ってこの関係を失うのは恐く、だからと言って過去を隠して〝YES〟なんて答えを出せるはずはないし、もちろん過去を打ち明ける勇気もない。
自分の中にある狡さに嫌気が差していく一方で、それだけ榛名さんへの想いが強いのだと気付き、自分の中の確かな変化を押し込める事に戸惑いが生まれもした。


許されない過去を忘れるな、と自分の中の何かが囁く。
だけど……同時に、これ程の想いなのだから素直に言葉にするべきだ、とも言われている。


恭子の言葉は相変わらず胸の奥に突き刺さったままで、がんじがらめになった心はその重さを痛感している。


こういう事に正解なんてないと、ちゃんとわかっているけれど……。それでも、どうしたって正しい答えに辿り着けない私は、誰かにそれを乞いたくなっていた。

< 240 / 318 >

この作品をシェア

pagetop