ラストバージン
「榛名さんの連絡先、履歴も含めて全部消しちゃったの……。この間アドレスも変えたし、榛名さんとはもう連絡が取れないんだ」
アドレス帳から榛名さんの連絡先を消す時、日高先生のそれを削除した時よりもずっとつらくて……。
「それくらいしないと、決心が揺らぎそうだったから……」
それでも、自分から断ち切らなければどうしようもなくなると気付いていたから、一息に作業を済ませた。
涙は何とか堪えたけれど、心にぽっかりと空いた穴は未だに大きくなっていくばかりで、塞がる術は見当たらない。
「本当にバカね……」
そんな私の心に届いた菜摘の声は何だか苦しげで、思わず泣いてしまいそうになったけれど……。
「過去の私の不真面目さを、半分分けてあげたいくらいだよ」
わざとらしく明るい笑みを浮かべた彼女を見て、何とか込み上げる寸前だった雫を堪える事が出来た。
「でもね、葵」
それから程なくして、菜摘がとても真剣な表情になった。
「もしその人と会えるチャンスがあるなら、もう一度ちゃんと話し合うべきだと思うよ。私みたいに軽蔑なんてせずに、葵の事が大好きなままかもしれないでしょ?」
そして彼女は、凜とした声に反して私を労るようにそっと諭した。
アドレス帳から榛名さんの連絡先を消す時、日高先生のそれを削除した時よりもずっとつらくて……。
「それくらいしないと、決心が揺らぎそうだったから……」
それでも、自分から断ち切らなければどうしようもなくなると気付いていたから、一息に作業を済ませた。
涙は何とか堪えたけれど、心にぽっかりと空いた穴は未だに大きくなっていくばかりで、塞がる術は見当たらない。
「本当にバカね……」
そんな私の心に届いた菜摘の声は何だか苦しげで、思わず泣いてしまいそうになったけれど……。
「過去の私の不真面目さを、半分分けてあげたいくらいだよ」
わざとらしく明るい笑みを浮かべた彼女を見て、何とか込み上げる寸前だった雫を堪える事が出来た。
「でもね、葵」
それから程なくして、菜摘がとても真剣な表情になった。
「もしその人と会えるチャンスがあるなら、もう一度ちゃんと話し合うべきだと思うよ。私みたいに軽蔑なんてせずに、葵の事が大好きなままかもしれないでしょ?」
そして彼女は、凜とした声に反して私を労るようにそっと諭した。