ラストバージン
「スマホ出して」

「え?」


突然の言葉にキョトンとすると、菜摘が目をスッと細めた。


「その高校教師に今すぐ連絡して」

「ど、どうして……?」

「決まってるでしょ。気持ちが変わってないか、本人に直接訊いてみるの」

「嫌だよ、そんなの……」


居た堪れなくなりながらも拒否の姿勢を取ると、彼女はしばらく私をじっと見つめていた。
付き合いが長いからこそ、さっきの話が本気だというのはわかる。


だけど……今更、榛名さんと話したところで、何かが変わるはずはない。
彼はきっと私の事を軽蔑しただろうし、あの日からもう二週間以上が経っているのだから……。


「じゃあ、今じゃなくてもいいから、ちゃんと連絡して話しなよ」


ようやく口を開いた菜摘は、心配げな表情をしている。


「それも、ちょっと……」


彼女の気持ちに申し訳なさを感じながらも、首を小さく横に振った。


「どうして?」

「これでも、榛名さんの事は本当に好きなの。だから、榛名さんに面と向かって拒絶されたら、たぶん今度こそ立ち直れないと思う……。それにね……」


眉を潜めている菜摘に自嘲混じりに微笑み、それから息をそっと吐き出した。

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