ラストバージン
Count,13 ラストバージン
十二月中旬の土曜日。
休暇が重なった榛名さんの家に泊まっていた私は、焼きたてのトーストをお皿に乗せる彼を横目に口を開いた。


「……ねぇ、本当に今日行くの?」

「昨日の夜、『もう決めた』って言っただろ。善は急げ、だよ」


ベビーリーフとミニトマトのサラダの手前にハムエッグを乗せ、オレンジを添えたお皿を差し出す。


「でも、何も今日じゃなくてもいいんじゃ……。いきなり過ぎると思わない? それに、ほら……映画を観に行く予定だったんだし」

「映画は夜に観に行くか、また改めればいいよ。それも無理ならレンタルする」

「うん、そうだね。でも、せめてもう少し先でも良くない? そしたらお正月だし、今はまだ付き合って三ヶ月なんだし」


榛名さんと付き合って三ヶ月と少しが過ぎていく中で、意外と頑固な彼を前に何度ため息を零したかわからない。


もちろん、そんなところも榛名さんの魅力だと思うし、彼の事はとても好きだけれど……。

「往生際が悪いよ、葵」

こうして問答すれば、私はいつもお手上げだった。


「そもそも、あんな電話の内容を聞かされたら、おちおち付き合っていられないよ」


榛名さんはやっぱり今日も一歩も引かず、私から再びため息が落ちた。

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