ラストバージン
「さすが主任! カッコイイです!」


力いっぱい言葉を紡いだ酒井さんに、思わず微苦笑を零す。


「そんな事ないよ」


彼女にどう見えたのかはわからないけれど、私はただ虚勢を張っているだけのつまらない人間で、本当は独り身である事に虚しさや寂しさを抱いているのだから……。


恋愛を避け続けていても、結婚を前向きに考えられなくても、人肌が恋しくなる事はある。
仕事が上手くいかない時や疲れている時には、そっと傍にいてくれるような人がいれば……なんて考えてしまう。


恋人が出来た親友に焦燥と微妙な遠慮を抱いている今、寄り添ってくれる人がいる人を心底羨ましく思う。
こんな気持ちだけでは上手くいかないだろうけれど、それでもまた婚活パーティーにでも参加してみようかと考える浅はかな私もいて、心の中は収拾がつかなくなっている程に支離滅裂なのだ。


一体、私はどうしたいのだろう。


人恋しさに恋愛をしても最後には結局は何も残らないとわかっているのに、それでも誰かを求めてしまう日々を送る近頃はとても憂鬱で。
行き場のない感情を持て余した心は決壊してしまいそうな程に不安定で、とにかく全てにおいて余裕がない。

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