ラストバージン
五人分のコーヒーと、姉夫婦の二人の子どもにオレンジジュースを用意する為に、コーヒーカップとグラスを出す。


「ごめんね、葵。私が『皆でお祝いしよう』なんて言ったから……」

「何言ってるのよ、別にお姉ちゃんのせいじゃないじゃない」


冷蔵庫からケーキを出す姉を横目に、コーヒーメーカーをセットして苦笑する。


九月末の両親の結婚記念日を皆で祝う事を提案したのは、姉と子ども達だった。


実家に帰って来るのが億劫な私は、姉夫婦と私でプレゼントした一泊の温泉旅行で充分だろうと考えていたけれど……。義兄の孝輔さんも快く了承してくれた事を聞いて、姉の提案を断る事が出来なかったのだ。


正直、こうして実家に集まる事を度々提案する姉に辟易する事もあるけれど、私の誕生日や節目にはもちろん、主任になった時ですらお祝いしてくれるような優しい姉だとわかっているからこそ、いつも断るという選択肢を選べずにいる。


「でも、私がこんな提案しなかったら、葵があんな風に言われる事もなかったでしょう」

「今日言われなくたって、どうせまた帰って来た時や電話で言われるだけだから、本当に気にしないで」


それに、この件は別に姉のせいではない。

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