黒愛−kuroai−
ここ2週間程、テニスコート通いを止めていた。
柊也先輩は見たいけど、
それより優先しなければならない事があり、忙しいから。
放課後、テニスコートに向かいそうになる足に喝を入れ、足早に学校を後にしていた。
柊也先輩はそれに気付いていた。
相変わらずファンが多いテニス部。
フェンスを囲むギャラリーの中に、私がいないと気付いてくれたんだ…
嬉しくて胸が高鳴り、顔が熱くなる。
彼は、さっきまで私が座っていた机に視線を向けた。
「まだ食い終わってないのか…少し話そうかと思ったけど、また今度…」
そう言われて焦る。
「食べ終わってます!お腹一杯だったんです!
と言うより、久しぶりに会えて胸が一杯で、もう食べられません!」
柊也先輩の腕を掴み必死で引き止める。
素敵な瞳が細められた。
「アハハ」と笑いながら、彼は頭を撫でてくれた。