黒愛−kuroai−
 


至近距離の大声に押され、菜緒は「わっ!」とのけ反った。


知っている事実を、なぜ声を大に宣誓するのか。

そう言いたげに驚いていた。




菜緒に向けて言ったけど、聞かせたかったのは別の人達。



“柊也先輩の彼女は私”

目論み通りその言葉は、アノ子達にも届いたみたい。




教室の対角にいる、女子グループ5人の集団が私を見ていた。


5人とも柊也先輩のファン。

でも4人は軽いノリで、夏休みまでテニスコートに来たりしない。



真剣に追っかけしているのは、この中で1人だけ。

私同様、夏休みのテニスコートに毎日姿を見た。



彼女の名前は、ブタ山…
じゃなかった、

“双山(フタヤマ)春香”



色白ポッチャリ体型で、やや垂れ目のおっとりフェイス。

良く言えば“癒し系”
悪く言えば“白い子ブタ”



ブタ子をライバル視しないけど、なんとなく気になっていた。



アノ子…

私と同じニオイがスル…




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