そう言うと、姫子はアイスをまた食べ始める。
春だと言うのにまだ少し肌寒くて、こんな公園でアイスを食べているのは姫子だけだ。

あたしはといえば、時々やってくる鳩に食べかけのポップコーンを投げている。
「ねえ、聞いてるの?」
「聞いてるよ」
「幸姫っていう名前も変わってるよね」
「普通の名前だけどね」
 あたしの名前は幸姫と書いて、ゆきと読む。
この名前のせいで、あたしは近所のジジィに朝鮮人と言われた。
あたしは朝鮮人でもないし、その名前をつけた祖母もとっくに死んでいる。
あたしの名前の由来は誰も知らない。
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