誰よりも優しい総長様


家の前には慶の単車があった。


「ほらよ。」


そう言って投げられるあたし専用のメット。


「え?あたし自分の出すよ?」


すると慶はため息をついた。


「お前馬鹿?なんのために迎えに来たと思ってんの?後ろ乗れよ。」


そう言ってあたしは半ば強引に慶の後ろに乗せられた。


「捕まってろよ。」


そう言うとあたしが返事をする前に慶は単車を走らせた。


学校に着けば速攻駐輪場へ。


と言ってもSクラスの駐輪場には単車以外ないんだけどね…


そして慶はいつもの場所に単車を止めるとあたしを降ろした。


「ありがと…////」


「ほら、行くぞ。」


そう言うと慶はあたしの手を繋ぎ歩き出した。


最初の方はみんなからの目線があったけど、最近はそんなのも無くなった。


いつもと変わらない穏やかな日々


そんな中でただ1つ違ったのはあたし達が受験生だってこと。


そして、引退が近づいているということだった。


「あ、総長、柚那さん、おはようございます。」


そう言って近寄ってきたのは彰くんだった。


「おはよ、彰くん。」


慶は特に返事をしない。


「もう、慶も挨拶しなきゃダメじゃない。」


「良いんだよ、俺は。」


そう言ってすたすたと歩き出した。


「ごめんね、彰くん。」


それだけを言い残すようにしてあたしは手を引っ張られた。


そして本館から少し離れた校舎へ向かう。


Sクラスの為の特別校舎だ。


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