逢いたい~桜に還る想い~

    ★    ★


名残惜しそうに離れていく唇に寂しさを感じ、思わずぎゅっとしがみつく。


そんなあたしの髪を、郁生くんがそっと撫でて、


そして───


「………トーコさん」


郁生くんの口から放たれた言葉。


「さっきの、返事……」


「……? なぁに?」


「俺、行こうと思う───親のところに」


「………えっ」


聞き間違いかと思って、───そう思いたくて、顔を上げると……


────あぁ、最期の桜の下で再会した“真”と、同じ瞳……


全てを受け入れた、

全てを覚悟した、

………全てを諦めた、悲しい色。



『最期に逢えてよかった』

『それだけで十分幸せだ』



そう、儚く微笑んだ真の姿に重なる。



嫌だ……この先は聞きたくない……だって、


離れたくない。

失いたくない。


そう思いながらも、目がそらせない……



< 307 / 517 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop