みあげればソラ


二人のやり取りを、沙希は無言で見守っていた。

あの家に自分の居場所を見つけられずに逃げ出したのは彼女だ。

弟の存在すら、彼女を引き止める理由にはならなかった。

彼女は求めていたのは、純粋な母の愛。

母の愛なくして、どうしてあの家の中で生きられようか。

求めずとも与えられる太一にそれが理解できるとは思えなかった。

かといって、それを責めるつもりもない。

太一とは生きる場所が違うのだ。


弘幸が言う様に、両親が家に戻ってきてくれと懇願してきたら、沙希自身はどうするのだろうか?

弘幸が言う様に、母が彼女に追い目を感じているのだとしたら、沙希はそんな彼女を許すことができるのだろうか?


今の自分には無理だろうな、と沙希は思った。

だって、今は生きるに精一杯なのだから。

やっと見つけたこの場所で、今を生きるしか未来はないのだから。

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