みあげればソラ
「坂田、俺、弁護士資格とるわ」
今の自分に出来るっこと、って考えたらそれくらいしか思いつかなかった。
「おう、やっとやる気になったか。
お前が資格とったら、俺も警察辞めるわ。一緒に弁護士事務所立ち上げようぜ」
坂田はそう言って笑った。
もともと在学時から、二人でそういう話をしてた。
『小さくてもいい、弱者の視点に立った弁護士事務所を作ろうぜ』ってな。
その夢は、俺のドロップアウトでドローになって、坂田は単身警察組織へ殴りこみをかけたわけだが。
「図体のデカイ偽善者の集まりなんて、ロクなもんじゃねぇ。
身動き取れねぇし、保身ばっかで正義の取り入る隙間なんてねぇし」
坂田はいつも、そんな風に愚痴ってたっけ。
だから俺が美亜や由貴や沙希を拾って共同生活を始めた時も、坂田は苦言を呈することなく協力的だったわけだ。
「お前は結局、俺達のやりたかった事を先回りしてやってるだけなんじゃねぇの?」
なんて、酒が入るたびに絡まれた。
「そんなこと言うなら、お前も警察辞めてホストになれってぇの!」
「バーカ、俺にはそんな器量はねぇよ。
身体で稼げなきゃ、頭で稼ぐしかねぇだろっ!!」
って、ドヤされたっけ。
ほんとお前は良い奴だよ。こんな俺を見捨てず、じっと何年も見守ってくれてたなんてさ。