みあげればソラ


「だたいまぁ〜

あれ? おふくろ帰ってる?」

暢気な声が玄関から聞こえてきた。バカ息子のご帰宅だ。

「お帰り弘幸。元気そうじゃない」

「お陰様で。そっちこそ」

「元気じゃなけりゃ、帰って来れないでしょ」

「確かにそうだ」

ハハハ……、と笑った顔が無駄に美しい。

その笑顔に見惚れながらも、叱咤しないわけにもいかない。

一応彼女は彼の母親なのだ。

「何その髪の色?金髪に染めてんの?」

「これが今の流行なの。もともと俺の髪、色薄いし、端正な顔立ちが引き立つでしょ」

「それ自分で言う?!」

「伊達にイギリス人の血が混じってませんから」

「そりゃそうだ」

「どれくらいこっちに居るの?」

「ま、3週間ってとこかな。

って言うより、あんた何ハーレム作ってんの!

女三人に男一人は世間的に不味いでしょ」

「だって仕方無いだろ。みんな行く場所がねぇんだから。この寒空に放り出せつぅのかよ」

「それにしたって……」

「無責任なあんたに何も言う資格はねぇよ」

「客観的な意見を言えるのは、今の状況じゃわたししか居ないでしょ」

「美亜がいる」

「あんたは美亜に頼り過ぎよ」

——ほんとバカ息子が!

< 39 / 207 >

この作品をシェア

pagetop