みあげればソラ


泣かせるつもりじゃなかったが、結果はこの通り。

俺はいつだって、自分を優先する最低な男だ。

普段は大人しい由貴が、一人でこんなところまでやってきたにはそれなりの訳があるに違いない。

だけど、泣かせちまったからには俺の出る幕じゃねぇよな。

こういう時は、

「マサルわりぃ〜、こいつどうにかしてくれ、俺今日は指名三本入って身動きとれねぇんだ」

店長の勝に泣きつくに限る。

奴はこの店のオーナー兼店長。

なんでもこのビル一つと引き換えに山田家から勘当されたらしい。


「仕方ないわね、こっちいらっしゃい」


勝は渋々俺に代わって由貴の身を引き受けてくれた。

色々苦労してる分、奴は面倒見がいい。

所謂聞き上手ってやつだ。

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