[B L]だからスキって言ったのに〒続編
ガラガラと音をたてながら、夏音が手術室へと吸い込まれていく。
扉が完全に閉まると、上の手術中と書いてある紅いランプがついた。
東悟と天野は手術室の前で呆然とする。
天野はなにが起こったか、全くわからなかった。
「…あの、先輩。
夏音は、」
そう言って、天野は
東悟に殴られた。
「………………ッッッ!?」
東悟は手術室の前だからなのか、こういう結末を予想していたからなのか、恐ろしいほど冷静だった。
「テメェ…なんで夏音を信じてやらなかった。」
その言葉に、天野はなにも言い返せなかった。
しかし、原因は東悟だ。
天野は開き直った。
「オレは、夏音がアンタと寝たのを知ってんだよ…!!
夏音の“好き”が嘘だってことも!!
だからオレは…!」
「夏音と別れたって?」
言おうと思っていた言葉を先に言われ、天野は一瞬詰まってからこう言った。
「…そうです。」
しかし東悟は冷静さを欠かず、さらに話を続ける。
「じゃあこれは知ってたか?
夏音がお前をたらし込んでるって噂を流したのは俺だってこと。
寝たのは一度きりだってこと。
その“一度”も、俺が媚薬を使って無理矢理犯したこと。
夏音が悪いことはなにもないのに、オマエに攻められて夏音がずっと悩んでたこと。
夏音がルイってヤツにイヤミを言われても頑張り続けたこと。
寝たのはたった一度きりなのに、ずっとそれを後悔していたこと。
夏音はルイってヤツより自分が天野のことを知ってることなんて1つもないと泣いていたこと。
言い訳しても良いはずなのに、それをずっとしなかったこと。
たった一つの汚点なのにずっと自分自身を攻め続けたこと。
どんなときも頭の中はオマエだらけだったこと。
オマエのためだけに、夏休み中努力してたこと。
オマエに信じてもらう為だけに、寝る時間を削り、食事をする時間までも削っていたこと。
どうだ?
知ってることが一つでもあったかよ!!!!!」
東悟は天野の胸ぐらを掴んだ。
天野は東悟から視線をはずし、「ない、です…」と小さく呟いた。