この愛に抱かれて
このままでは怜が屈折した人間になってしまうのではないか。


怜だけではない。


親を亡くしたことで、みんなが自分に同情している。



腫れ物にでも触るかのように常に気を使っているに違いない。



様々な思いが響子の頭の中を駆け巡っていた。



自分がいると、みんなに迷惑がかかる。




その夜、響子は家を出ることを決めた。




みんなが寝静まったあと、服を着替えた。



愛用のリュックを背負い、兎のぬいぐるみを抱いて静かに玄関のドアを開けて外に出た。
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