彼氏契約書
そう言ってドア越しに立っていたのは、やはり蒼空だった。


「そんな事、言われなくても分かってる」

「もう、お帰りですか?」

「差し入れを持って来ただけだから、もう帰る、じゃあな」

「ありがとうございます」


少しだけ会話を交わした社長は、病室を出ていった。


「具合はどうですか?」

「うん、今日は、お腹の張りもほとんどないみたい」

「あ」

「・・・え??」


「またデッサン書いてたでしょう?」

「・・・・・」

サッと紙を隠すと、蒼空は溜息をついた。

「困った人ですね」

「だって、退屈なんだもの・・・

勿論赤ちゃんの為だって言うのは分かってる。

でも、別に暴れてるわけじゃないからいいでしょう?」


そう言って上目遣いに蒼空を見た。

すると蒼空は困ったように笑った。

「程々にしてくださいね」

「・・・はい」
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