恋するほど   熱くなる
β.別オファー
私は派遣会社を退社した。

問題なかった。

引越し先は事務所の近くのマンションだった。

ワンルームだったけれど

まだ新しくてコンパクトにできていた。

ベッドはロフトで

バスルームは乾燥機付きだった。

年末年始も仕事が入っていた。

挨拶回りの数も半端ではなかった。

仕事始めは雑誌のモデルだった。

撮影スタジオに初めて行った。

ヘアメイクもスタイリストもいて私を待っていた。

たった二ページの写真を撮るのに一日かかった。

一体何枚撮ったのかしら?

私が荒木さんに聞いたら

「たぶん二百枚以上だと思う。」

「なんて無駄なのかしら?」

「それが彼らの仕事なのさ。」

私は納得いかなかった。

彼にそう言ったら

「人生は無駄ばかりだ。だがその無駄の中に真実があるのさ。」

私は彼が詩人だったらいいのにと思った。

彼の口から出る言葉に私はうっとりできた。

彼の中には私の求めるものがたくさんあった。

彼は私が必要とするものをたくさん持っていた。

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