歪ノ櫻(イビツ ノ サクラ)
語(カタリ)
明日、私は村を出ます。

奉公のために、と言えば聞こえは良いですが、連れて行かれる先は遊郭。
所謂(いわゆる)身売りと言うものです。

本当にどこかの大店の下働きにでもなれたのなら、私は喜んで汗水流して働くことでしょう。


それでも口減らしのためにと獣が潜んでいるかもしれない山奥に、迎えに来ると親に騙されて捨て置かれるよりは、命の保証があるだけでずっとましなものです。


大人しく従ってさえいれば、怖い目には遭わないでしょう。
それどころか、ここにいるよりもいい食事にありつけることだってあるかもしれません。


捨てられるよりも、売られるほうがずっと良い。



殺されるわけではないのですから。
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